住まいに対する意識を少し切り替えれば、家づくり自体を楽しみ、その家で暮らすこと自体を大きな喜びにできる。つまり「家」そのものを趣味にすることができるはずである。思えば私が建築家として独立した頃、自宅の設計を建築家に依頼する人には趣味人が多かった。自分が建てる家に対して、彼らはかなりの主張やこだわりをもっていた。自分で間取り図を描き、外観や内装をデザインするくらいは序の口だ。「玄関の土問は昔ながらの三和土で、床の間の柱はケヤキ」などと細かく指定する人もいた。
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大工の棟梁と連れ立って銘木探しの旅をした人もいた。毎日のように建築現場に顔を出して棟梁たちとお茶を飲み、大工さんと一緒に梁を運んだり、左官屋さんに教わりながら壁土を練って塗ったりする人もいた。ある建て主は、自分で玄関前のアプローチをデザインした。そしてタイル屋さんと相談しながら赤と白のタイルを選び、自分の手ですばらしい市松模様のモザイクを貼り上げた。家とともに永遠に残る「オレの作品」である。彼は外出するたび、そして帰宅するたびに、自分の足でアプローチの上を歩く。「ここはオレの家だ」という思いもひときわ強いことだろう。多忙な現役サラリーマンには時間の余裕がない。やりたくても、できることは限られてしまう。しかし定年退職後なら、やる気さえあれば多くのことができる。